石川のワイン

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2009.07.05

醸造方法


 ヨーロッパで砂糖は17世紀までまだ一般に簡単に入手できるものではなく、非常に効果なものであった。しかし18世紀に中部アメリカ(西インド諸島)から大量に輸入され、市場価格はまったく下がってしまった。17世紀以前のヨーロッパでは。蜂蜜が主要な甘味料であった。ただワイン産地では、ブドウの果汁を甘味料にしばしば用いた。しかも南ヨーロッパでは、古くから甘口のデザートワインが飲用の外、食品の調味料にしばしば用いられて来ている。

 ここでは、デザートワイン、リキュールワイン、天然甘口ワイン、甘味果実酒など、甘口ワインに対する各国の若干異なる定義にふれながら、甘口ワインの醸造について述べる。

各国の定義

 アメリカ(USA)では、ポート、マラガ、マディラ、マルサラ、シェリー、アンゼリカ、カルホルニアトカイなど、アルコール(ワインスピリッツ)を添加してつくるワインを、デザートワインと定義している。

 ドイツでは、濃縮された糖分の多い果汁、または通常ワインに濃縮果汁を加えたワインを「濃縮デザートワイン」と言うことがある。また発酵果汁にアルコール添加、あ、アルコール添加果汁を加えたワインを、「アルコール添加デザートワイン」と言う。

 フランスで法的に認められている甘口ワインの醸造方法は、貴腐ブドウから作られる甘口ワイン、リキュールワイン、天然甘口ワインなどがある。

 日本では、平成元年4月の改正酒税法により、果実酒類のうちで糖類を加えたものは、次ぎの定義により甘味果実酒となっている。
  • アルコール分が15度以上のもの。
  • 砂糖、ブドウ糖、果糖以外の糖類を加えたもの。
  • ブランデー、アルコールまたは果実を原料としたスピリッツの混和割合が10%をこえるもの。
 これにより従来甘味果実酒に区分されていたシャンパンや、ワインに果汁などを混和して造るワインクーラーなどは、果実酒に区分されることになった。

フランス

フランス食品振興会(SOPEXA)発行の新刊書(Vies et Spiritueux de Franse 1990)によれば、フランスの甘口ワインの造り方は次ぎのようである。

貴腐ブドウから造る

ブドウの粒にボトリティス・シネレア(貴腐)がつくと、ブドウから水分を奪い果粒中の糖分が濃縮され、グルコン酸やグリセリンなどが増える。収穫は、よく乾燥した房を選んで順じゅんに摘みとるが、一粒一粒よく貴腐(Pourriture noble)化したブドウを摘みとることもある。

 貴腐ブドウは、非常に糖分が多いために、酵母はアルコール発酵を途中で停止して、貴腐ワイン中に山残糖を残す。貴腐ワインは、樽で熟成させる。こういったワインの産地は、ボルドーのソーテルヌ、バルザック、モンバジャック、ロワール(コトー・デュ・レイヨン)、カール・ド・ショーム、アルザス(粒より=selection de grains nobles)にある。

遅摘み法(passerillage)

太陽のもとでブドウの房をできるだけ長く摘みとらずにおいて、ブドウの糖分を濃縮させる。あるいは醸造前にブドウの房を、ストロー(わら)に敷いて乾燥させ、ブドウ粒内の内容成分、特に糖分を濃縮させる。ジュラ地方では、この方法でストローワイン(vin de paille)を造る。

リキュールワイン(Vin de liqueur=VDL)

リキュールワインは、ブドウ果汁にアルコールを添加して、発酵はまったく行わない。そのためにブドウ果汁中の糖分は、全部残る。このタイプのワインのアルコール含量は、15〜22%である。

 コニャック地方で造られるピノー・デ・シャラントは、コニャック産ブドウ果汁(糖分170g/L以上)に、コニャックを加えて発酵を停止させたAOCリキュールワインである。リキュールワインには、蒸留酒と同じアルコール飲料税がかけられている。

天然甘口ワイン(Vins doux naturels=VDN)

糖分の高い(最低252g/L)ブドウ果汁が、発酵を途中で停止したAOCワインで残糖が多く、アルコール分は最低15%。このワインには、ワイン税がかけられている。

 赤、ロゼ、白の天然甘口ワインが、ブドウ品種や醸造方法にしたがって造られる。この天然甘口ワインの主要産地は、ラングドック・ルーションだ。この甘口ワインは、赤より白ワインの生産が多い。ミュスカから得られたワインは果実香が高い若いうちに飲んだ方がよい。熟成用の天然甘口ワインには、赤ブドウのグルナッシュを主に用いる。それらの産地はバニュールス、モーリー、リブザルトなどである。

ドイツ

ドイツワインは、一般に甘口が多いが、単なる甘口ではなく、酸味と甘味が調和した素晴らしい美酒である。ドイツワインを冷やして飲むと美味しいのは、そのワインのなかにリンゴ酸が多く含まれていることが多いからだ。しかし貴腐ワインには、グルコン酸が多く、室温よりいくらか冷やして(13〜15度)味わった方がよい。

 ドイツワインの辛口としては、フランケンのワインが有名だが、通常甘口ワインとされているアウスレーゼでも、近頃は辛口のトロッケン(残糖9g/L)のものがある。  ドイツの超高級甘口ワインとしては、ベーレンアウスレーゼ、アイスバイン、トロッケンベーレンアウスレーゼなどがある。

 本稿をまとめるにあたり、SOPEXA(東京)から、貴重な参考資料を頂いた。ここに厚くお礼申し上げる。

イタリア

イタリアのデザートワインとして、シチリアのマルサーラは特に有名。しようブドウは、ガッタラート、インソリアなどが用いられる。発酵中のワインの酸度を高めるために、スペインのシェリーと同様に石膏を加える。発酵後「シホン=Sifon」と呼ぶワイン蒸留アルコールと未発酵果汁の混合液を加える。マルサーラは、辛口(seco)から甘口(dolce)までがあり、アルコール分は、17%までに達する。

 よいマルサーラは、熟度2〜3年後に市販される。マルサーラの生産地域は、トラパニとシチリア北部のパレルモである。

マルサラの甘辛度

 最も辛口のマルサーラは、マルサーラ・ベルジャネ(Marsala Vergine)と呼び、樽香がよく、冷やして美味しい。マルサーラ・フィノ(Marsala fino)は、いくからか甘い。マルサラ・スペリオーレ(Marsala superiore)は、カラメル香があり、愛らしい味わいがする。マルサーラの高級酒にはS.O.M.=Superior Old Marsalaと書いてある。辛口の高級酒では、リセルバ・エガディ・スペリオーレ(Riserva Egadi Superiore)がある。最近では、アロマチック・マルサーラ(Aromatic Marsala)がある。これはニキネや卵黄を混ぜて造る。一般にマルサーラは、12度ほどで味わうが、辛口ならもっと冷やして良いだろう。

そのほか

このほかシチリア以外のイタリア各地にも中甘口のワインや発泡性ワインがあるが、既述の報告(ガゼット)を参照して頂ければ幸である。

ギリシャ

ギリシャのデザートワインとしては、サモス島のサモスワイン(Samoswine)が最も有名。このワインは、新鮮でいくらか乾燥させたムスカテルとフキアノ(Fukiano)ブドウから造られる。アルコール発酵が5%に達したとき、純アルコールを添加する。ちょうどポルトガルのマディラワインのような性格をしたワインだ。アルコール分は、150g/Lで、残糖は150〜220g/Lもある。

ビノ・サント(Vino santo)

サントリン島からは、ストローの上で乾燥させた甘口のビノ・サント(Vino santo)がある。コリント湾の近くに、赤の伝統品種マブルードから、マブロダフネ(Mavrodaphne)が得られる。この外、ロドス島やクレタ島にもポートワインに似たデザートワインがあるが、それほど有名ではない。

スペイン

スペインのアンダルシア地方のマラガ市中心に、半甘口から甘口のデザートワインが造られている。このワインは、ペドロヒメネス(Pedro Ximenes)とモスカテル(Moscatel)から造られる。このワインは、まず完熟したブドウを木の上にしばらくつるしておくか、収穫後2、3日、太陽の下で乾燥させる。その後で、徐こう圧搾した果汁を発酵させる。熟成はシェリーと同様にソレラシステムで行う。2〜3年熟成させたものは、ラグリマ(Lagrima)として売られる。書高の品質のものは、モスカテルから得られる。

 輸出用には、一般にアロペ(Arope)またはコロル(Color)と呼ぶ色付け用の濃縮ブドウ果汁とアルコールを加える。この方法で非常に甘くて(136g/L)アルコール分(110〜150g/L)の高いマラガが得られる。

シェリー

スペインのカデス県のヘレス・デ・ラ・フロンテラは、有名なシェリーの産地。Jerez Xerez,Sherry 三つ原産地統制名称(D.O.=Denominacion de Origen Contronada)が許されている。

 アルコール分が高く、コハク色をしたワインで芳香がよい。このワインは、白ブドウのペドロ・ヒメネス、モスカテル、パロミノ、カスティグリアノから造られる。これらの完熟ブドウの糖分を、さらに高めるために、収穫後1〜2日間、太陽ももとで乾燥させる。地上のボデガ(醸造熟成倉)では、圧縮したブドウを約500Lの樽にいれて発酵させ、新ブランデーを添加する。通常三段階から五段に積み重ねた樽(ソレラシステム)にワインをいれて熟成させる。樽の上面は、空気に触れさせておく。シェリーは、タイプとして分けると産膜酵母をはやした辛口のもの(フィノ=15−1Alc.%)、それが熟成した古酒のアモンティジャード、そのほかにアルコール分が高く産膜させないで得られる甘口のオロロソ(18〜20ALc.%)の三つになる。

マンザニリャ(Manzanilla)

 サンルカールには、フィノに伴たマンザニリャ(Manzanilla)がある。

 シェリーによく似たモンティジャ・モレス(Montilla-Moriles)は、シェリーと同じデザートワインでヘレスの北東のコルドバ県にある。ここの夏は高いので、アルコール分が多い。それゆえシェリーのようにアルコールの添加は行わない。

ポルトガル

ポートワインは、イギリスでは特に愛飲されている。ポルトガル北部のドーロ川沿いの渓谷のブドウ畑に育つブドウから作られる。このワインは、発酵途中でオリと分け樽に入れられる。この時ブランデーを5〜6%加えるが、ブドウ果汁対ブランデー(4〜5部対1部)の混合液(ゲロピガ=Geropiga)を5〜10%加える。

 その後、さらにオリびきを行い、ブランデーを加え、最終的にアルコール含量を、130〜200g/L(16.5%−25容量%)にもって行く。

 こうやって、さらにオリびきを二回行い、ドウロ川口のビラ・ノバ・ガイアの貯蔵熟成倉へ樽のまま運ばれる。ワインのタイプによって2〜10年間熟成されてから、ブレンドされる。赤系は、ルビー・ポート、タウニー・ポート、ビンテージ・ポート、クラステット・ポート、レイト・ボトルド・ビンテージ・ポート、白系は、甘口と辛口のホワイト・ポートがある。

マディラ

マディラは、シェリー、ポート、などと共に世界三大デザートワインといわれている。アフリカ大陸の西でモロッコの沖合にあるマデラ島で造られている。そのブドウは、マルバジア、ムスカテル、アリカンテ、ベルデリョなどだ。

 最もよいマディラワインは、島の南海岸沿いのフンシャルのマルバジアブドウから造られる。このブドウは、もともとクレタ島から移植したものである。

 マディラの製造は、発酵後期に4〜5%のブランデーを加えて、発酵をとめる。さらに再発酵を育むために、ブランデーを追加する。また甘味付けに、果汁(Mistela)またはまれに濃縮果汁(Arrobe)を加える。よいマディラは、6年間の熟成が必要。また、ガラス営根(Estufas)の室へ樽を置き、太陽熱で加温して熟成を促進させる。マディラワインの最低アルコール分は、17容量%(135g/L)である。値外的には、やや低い15.5容量%(123g/L)のものもある。マディラのタイプは、セルシアル(辛口)、ベルデリョ(中辛口)、ブアル(甘口)、マルムジー(極甘口)の四つである。

 これらは、ブドウの品種名だが、セルシアルを除いて使用品種名を意味していない。なおポルトガルのデザートワインとしては、リスボンの近くにあるセッチュバルのモスカテルや。カルカベロスなどにもある。

 こういったワインは、食前にも食後にも飲まれている。また一部は、高級材料のなかに使用されている。

ハンガリア

ハンガリアのトカイ地区は、高級甘口ワインの産地である。ここのワインは、1650年頃から有名になった。ブドウの品種は、主にフルミントとハルスレベリョ(リンデンブレタリガー)の2品種である。トカイの高級貴腐ワインはトカイ・アスズ(Tokaj aszu)とハンガリアでは言われている。ここでは新鮮果汁に貴腐ブドウを混ぜて造る。貴腐ブドウ1カゴ分(15kg)を1プットニュ(1Puttony)、それ以上をプットニョス(Puttonyos)と呼ぶ。樽の大きさは、135Lで樽の中へ新鮮果汁と2〜6プットニョスの貴腐果汁を混ぜる。とくにアスズ・エッセンツェン(Aszu Essenzen)は、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼの発酵前果汁と同じぐらいの糖分か、それ以上になることもある。

トカイ・アスズ

 一般にトカイ・アスズは、デリケートで新鮮で蜂蜜のような香りと焼き立てのパンのような芳香がある。それになによりも高貴な貴腐香がする。自然発酵によってアルコールは、12%(容量)にまで達する。残糖は30〜150g/Lのものが見られる。

トカイ・サモロドニー(Tokai Szamorodoi)

 一方トカイ・サモロドニー(Tokai Szamorodoi)は、ドイツのシュペトレーゼ(遅摘み)のようにして造られる。甘口のサモロドニー・エデシュ(S.Edes)は、特にシュペトレーゼに似た風味がある。また辛口のサモロドニーサラシュ(S.Zaraz)は、いくらかのアペリチフ的で、デリケートなシェリーのような味がする。

レーズンワイン

レーズンワイン(ロジーネンバイン=Rosinenwein)は、ドイツやスイスでは醸造も販売も禁止されているが、オーストリアでは、ワイン、レーズン(干しブドウ)、砂糖、アルコールを混合して甘口ワインを造ることができる。このレーズンワインのアルコール分は、22.5容量%(178g/L)である。アルコールに変化した糖分と残糖分は、計算上260g/Lにもなる。この甘口ワインを造るには、できるだけ新鮮なマラガブドウやサルタナブドウのレーズンがよいとされる。ただ、一般的には、ブドウの値段の安いエレメブドウが多く用いられている。

オーストリア

 オーストリアでは、並酒でもコクのある、ワイン二部にエレメが一部いう割合でまぜて、2〜3日間浸してから抽次し、さらに圧搾する。この液は、小さな樽にいれて発酵力の強い酵母を加えて発酵させる。さらに発酵後期に砂糖とアルコールを加えて商品価値と保存性を高める。しかもシェリー風の風味を次せるために、樽中のワインは満量にせずに置き、太陽のもとで過温熟成させる。なおレーズン以外の果実乾燥物、レーズン抽出物、薬草などの添加は許されない。
    渡辺正澄(GAZETTE,NO.7,8 1990)
    文献
  • SOPEXA(tokyo)Vins et Spiritueux de France(1990)
  • John Melville:Guide to California Wines,41-49,E.P.Dutton&Co.,INC.New York(1972).
  • 柴田忠:改正酒税法と消費税の解説、28-29、醸造産業新聞社、東京(1989)
  • 小原厳:日仏工業技術、20巻、3号、15−22(1974)
  • E.Vogt,L.Jakob,u.E.Lemperle:Der Win,216-222,Verlag E.Ulmer,Stuttgart(1977).
  • 日本ソムリエ協会=ソムリエ、ワイン・アドバイザー基本技術講習会テキスト、編集=浅田勝美、101-102、110-113(1989)